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混ざっとは?

[ 63] 妹(3) / "混ざり姫"
[引用サイト]
http://fox.hokkai.net/~hachikun/s/mazarihime-x/10.html

だから私は自分がどうやってそこを駆け降りたのか自覚がない。おそらくは髪を、手足を使って非常階段や窓のへこみをとっかかりに加速を殺したんだろうけど、それでも限度がある。ぶっちゃけ、ただのひとならマンションの上からの落下なんてただですむわけがないのだ。
どうしてあんな気持ちになったんだろう。私は魔だ。魔は冷酷というわけではないけど、ひとつの割り切りを持っているはずだ。ひとの世界でひとでない者が生きるためにはその能力を隠さねばならない。いくら能力があろうと異端は異端で、自分が異端だと悟られたら生きられるものも生きられないからだ。
瀬尾の目が点になる。そりゃそうだろう。彼女はお嬢さま然とした遠野秋葉しか知らない。それが活動的なデニム上下を着込み、あまつさえ突然に出現したのだ。驚かない方が嘘だ。
上から『落ちてきた』ことには気づいてない。そりゃそうだ。ひとが空から降ってきたなんて即座に認識できるわけがない。それは『ありえないこと』だから。
こういうは速攻で且つ強引に進めるに限るわけで、同時に右手は死者の首、それと胴体の二箇所を線にそって切断している。そのまま凝固した血が飛び散る前に瀬尾を抱きかかえ、そのまま一気に百メーターほど向こうまで駆け抜ける。
遠野秋葉由来のこの身体は、魔としてはなかなかのものだが決して頑強というわけではない。筋力等もそう。魔の要素を前面に押し出さない限り、その身体能力はわりと一般的なレベルのものでしかない。とどめに、ここしばらくの半幽閉生活で身体は大仕事を忘れている。
確かに、服装はともかく外見も態度も遠野先輩そのものですから、普通のひとにもわかるかといえばちょっと疑問ですけど」
瀬尾は大したことないと言うけれど、断片的で制御できないといっても未来が見えるというのはかなり奇異なる能力だろう。少なくともそれで彼女は私、正しくは遠野秋葉と遠野詩姫を襲った出来事をかなり的確に把握したうえ胸が潰れるほど心配し、あげくのはてにとうとう自ら駆けつけてきたというわけだ。
「知りません。危険だと思ったし、私自身もここまで正確に居場所や状況がわかってるって自信がなかったんです。
「事情はわかったし、他のひとに隠してくれたのもありがたいわ。正直いまは微妙すぎるの。貴女には本当に感謝してる。
「そこまでわかっているならどうして来たの。貴女が来たからってどうにもなるもんじゃないってこともわかってたでしょう?」
「それは、じゃないでしょう。そこまで状況を把握してるんなら、少なくとも危険である事はわかったはずよね?なのにどうして来たの?
瀬尾の鼻先に顔を近づけた。さっきから抱きかかえたままなのでちょっと傍目には危険な光景かもしれない。
なるほど、彼女はその『能力』で私が狩りをしているシーンを見たんだろう。で、よりによって犯人が私である事にびっくり仰天、後先考えずにすっとんできてしまった、と。
「とにかくもう帰りなさい瀬尾。本来ならもう遅いから泊めてあげたいとこだけど、知っての通り遠野の家はもうないの。今御世話になってるとこは他人の家だし、同居人には会わない方がいい。貴女が普通の人間として生涯を終えたいのなら絶対会ってはいけない相手よ」
ああもう、そんな子犬みたいな顔しないでよ。帰したくなくなっちゃうじゃない。もっと抱きしめてめっちゃくちゃにして、ぬいぐるみ代わりに抱きしめてベッドでおねんねしてみたいとかそういう類の。
トクン、トクン、トクン。心臓が鳴る。私の中の『遠野志貴』が反応している。遠野秋葉の『お持ち帰りしたい』気持ちと男性としての『可愛い女の子をゲットしたい』気持ちが共鳴してる。
繰り返すけど、貴女はこれ以上関わってはダメ。帰って、そして全て忘れなさい。それが貴女のためなんだから」

 

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